あ、在庫がない!部品を発注しなきゃ!
と思って急いでプレス工場に発注を入れました。幸いプレス工程のみで完成する部品で早く製作できることが見込まれそうでした。
納期は最短で(希望は3日後)で100個だけ注文を入れる事とし、頼りにしているプレス工場へ発注すると、どうしてかこんな納期じゃ無理、こんな数では仕事にならないとクレームの電話が入りました。
プレス工場の希望は次の通り。
◆製作ロットは3000個程度欲しい
◆納期は最低でも5週間は欲しい
発注をした担当者は驚きを隠せませんでした。たった100個なのになぜこんなに納期がかかってしまうのか。しかも100個しか必要がないのに、3000個もつくる必要があるのか。
今回はこの謎を解説したいと思います。
プレスで製品を製造するということは、段取りに時間がかかります。おおよそのプレス工場は先に注文が入っている商品から製造に手を付けますから、当然順番が回ってくるためには時間がかかります。
したがって、段取りの順番が来るまで100個は製造できないということになります。
その段取りにはどのような時間がかかるのでしょうか。ざっと、段取りのToDoを下記にまとめてみました。
◆金型棚より金型を探す
◆金型をプレス機械に取り付ける
◆金型に材料を通し、寸法を確かめる
◆プレスする
上記を金型の数だけ繰り返すこととなります。例えば、ブランク・ピアス・ベンドの金型があれば3工程3型になりますので、3回上記の段取りを繰り返すことになります。
おおよそ1型の段取りは30分~1時間程度かかります。段取りの難易度が高いものはそれ以上かかることもありますが、イメージとしてとらえてください。
1時間をかけて段取りしたのち、100個加工をします。
100個の加工には加工しやすいものですと10分程度で完了します。1時間の段取りに対して、生産個数が100個となりますので、生産する時間より段取りに時間がかかっていることになります。
したがって、プレス工場に
「こんな納期じゃ無理、こんな数では仕事にならない」
と言われたわけです。
一般的にプレス製品の単価はロット数が決められていて、その数量生産するんだったらこの単価という風に決められています。例えば1Lot3000個生産で単価22円だとしたら、一回生産するごとに66,000円の売り上げとなるわけです。
それを単価22円で100個生産となれば売上は2,200円となり段取りコストでさえ出なくなってしまうのです。
さて、これまでのお話のようにプレスによる小ロット生産はコストがかかります。適当なロットで生産した場合の単価では製造できません。そのコストの上昇分でお客様の在庫リスクが低減されると考えてもよいと思います。
国内需要のみを考えると、今後も人口減少が続くことは明確です。今後の需要が細くなると考えられる品物については金型で生産するのをやめることも視野に、より合理的な生産方法を考えることも重要です。
例えば、ブランクのみレーザー加工とし後加工のベンド等に金型を用いるという方法があります。材料に熱を加えてはならない製品には適用できませんが、それ以外の品物には現実的な方法だと思います。
弊社では小ロットの金型での生産を受けておりますが、金型は基本的に受けて、返却することとなります。したがって、金型の発送運賃も別途かかってきます。
十分コストとのご相談の上、お問い合わせいただければと思います。